小さな一歩

情けなくてもかっこ悪くてもこれが私 

25年前の11月4日

とても寒いまだ薄暗い早朝の事だった

 

旦那の名前を叫び続ける旦那の母の声

 

当時、長男を妊娠中で眠かった私は

 

ベッドでうとうとしていた

 

玄関の引戸が勢いよくあく音

 

じいさんやばあさんの慌ただしい様子、足音

 

旦那の

 

親父、戻ってこい!戻ってこい!

 

という緊迫感のある声にようやく

 

只事では無いことに気がつき

 

階段を降りると

 

そこには横たわり頭から溢れ出た血が広がり

 

懸命にお義父さんに対し心配蘇生をしている旦那

 

まもなく救急車のサイレンが近づく

 

サンダルを履いて外に飛び出して

 

こっちだと誘導する

 

お義父さんは救急車に乗せられ

 

じいさんとお義母さんは自家用車で後に続く

 

旦那も乗り込んで病院へ急行

 

病院へ着く前に、命の灯火が消えた

 

玄関の廊下の血をばあさんが泣きながら拭いて

 

残された家族は放心状態

 

旦那の妹は、修学旅行で京都に着いたばかりの朝

 

そのまま一人きりで電車で戻る

 

警察が来て自宅内を捜査

 

指紋🫆を家族分取られる

 

事故事件色々な可能性の為だと言うが

 

悲しみの中にいる家族にとって

 

更に苦しくて辛い時間だった

 

初めて、旦那が声をあげて泣いているのを見た

 

その後は怒涛の如く過ぎてあまり覚えていない

 

 

旦那のお義父さんはベーチェット病という難病

 

35歳の時に体に不調が出て、色々な病院で検査

 

当時まだ症例が少なかった病気大学病院で診断

 

そして、治療法もなく対処療法で10年以上

 

お義母さんはずっと病院に付き添い看病してきた

 

その間に旦那と私が結婚して同居

 

数えるほどしか病院から外泊は出来なかった

 

ベーチェット病のせいで視力がほとんど失われた

 

お義父さんが、久しぶりに外泊して

 

私とお義母さんは張り切って蟹クリームコロッケを作った

 

美味しい美味しいと痩せた体で食べてくれた夕飯

 

最後の食事になってしまった

 

実家には一階にしかトイレが無くて

 

2階の寝室から、トイレに行こうとして

 

間違えて窓を開けて、転落してしまい

 

長年の弱った体はもう限界だった

 

喪服を着て、雪が降り風が強くて

 

お墓ではロウソク線香の火がすぐに消えてしまった

 

お義父さんが亡くなって半年後の5月2日

 

長男が無事に生まれた

 

立派な鯉のぼりが上がって

 

家族みんなが喜んでくれた

 

後になって、お義父さんが入院中に

 

孫が出来たんだ、抱っこ出来るかなぁと

 

嬉しそうに話していた事を聞いて

 

抱っこして欲しかったなぁと思ったら

 

涙が止まらなかった

 

長男も来年春には25歳になる

 

太刀魚が釣れたと画像が送られてきた

 

会ったこともない祖父も釣りが趣味だった

 

🧬 似ているのかもしれないね

 

今日は、実家に行ってきます